ここに掲載のリストはUTiCdさんの「What's UTiCdの掲示板」の話題の中でUTiCdさんが個人的にピックアップされたものです。
つきましては、本来が個人的参照用であり公開を目的として作成されたものではありませんので、「参考用のみ」とし、誤記や記入漏れ等に対して何ら責任を負うものでないという条件付きのリストです。
また、ここでの「オーディオ向き」というのはコンプリメンタリーペアが存在するとか、ローノイズ品があるといった程度の意味で、明確な基準によるものではありません。
1. | J-FET(接合型FET) |
2. | 低雑音トランジスタ |
3. | ミニパワー・トランジスタ(ドライバ) |
4. | パワー・トランジスタ(パッケージタイプ別) |
上のリスト全体をエクセル表形式に収めたファイルはこちらです(約59KB)。
5. | 高耐圧トランジスタ(New!) |
半導体素子に詳しくない者にとって、どんなトランジスタやFETを使ったらいいのかという問題があります。 例えば、「トランジスタ規格表」(CQ出版社)などを見ても400ページにわたって数千種類が掲載されていて、あまりの多さにどれがいいのか選ぶ手立てがありません。
そこで、手持ちの回路設計の入門書やアンプの製作記事などに紹介・使用されているモデルから「らしいもの」を捜すといったことになるのですが、入門書類に使用・紹介されているものは、概ね入手しやすい定番モデルになっているようですが、必ずしもオーディオ回路を前提にしたものとは限りませんし、逆に、オーディオアンプの製作事例に使用・紹介されているモデルは製作者のこだわりによって、とっくに廃番になっているような一般には入手できない希少品種だったりします。
そういったところで、UTiCdさんの「What's UTiCdの掲示板」で「個別半導体素子の製造中止が続く中で、オーディオ用に使える素子がいったいどれくらい残っているのか」というような話題があり、その話題のなかでUTiCdさんがピックアップされたリストを目にしましたので、コピーさせいただきました。 リストで「入手困難」となっている品種は削除しようかとも思ったのですが、製作事例等に使われているモデルとの照合用としての意味があるので残しました。(2001年4月6日)
なお、このリストに掲載のモデルは「入手困難」となっているものを除いて大部分は秋葉原やサトー電気の通販で入手可能なようですが、大阪の日本橋のお店で入手できるものはかなり限られるようです。
◆高耐圧トランジスタのリストと補足(2)を追加(2003年4月17日)
私も詳しくないのですが、真空管から入られた方など半導体素子に馴染みがない方がご覧になるかもしれませんので、更に、少しだけ補足です。
<トランジスタとFET>
いわゆるトランジスタはバイポーラ・トランジスタ(Bipolar Junction Transistor=BJTと略)と、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor=FETと略)があり、FETには接合型FET(Junction FET=JFETと略)と絶縁ゲート型FET(Metal Oxide Semiconductor FET=MOS FETと略)があります。
普通にトランジスタと言うとバイポーラ・トランジスタ=BJTのことで、真空管で言えば三極管のグリッド端子(G)/カソード端子(K)/プレート端子(P)に相当するベース端子(B)/エミッタ端子(E)/コレクタ端子(C)の三本足で、大部分のトランジスタはベース・エミッタ間のバイアスが概ね0.6V(ベースの方がエミッタより0.6V高い)で動作します。
<極性と種類>
真空管と同じ極性のNPN型=型番の先頭が2SC、2SDタイプと、極性が逆のPNP型=2SA、2SBタイプがあります(D、Bは低周波増幅用らしいですが高周波用のA、Cとの境界は明確なものではないようです)。
#PN接合の一方向に電圧を流す性質を利用したダイオードや、逆方向のブレークダウンの性質を利用して一定電圧を作るツエナー・ダイオードもトランジスタの仲間と言えます。
<hFEランク>
トランジスタは電流増幅素子と言われるように、ベースからエミッタへ流れるベース電流に比例(直流電流増幅率=hFE)した大きさの電流がコレクタ・エミッタ間に流れます。 同じ型番でもhFEの幅は大きく、予めメーカーでランク(グレード)分けされていますが、ランクの名称は各社まちまちです。 例えば、東芝ではGR(グリーン)やBL(ブルー)の色区分、日立やNECはアルファベット区分になっているようです。 個人がバラで買う場合は、店と型番によっては必ずしも自由にランク指定できるとは限らず、特定のランクしか置いていない場合も多いようです。 また、ランクにも許容幅があるため同一型番の同一ランク内でもロットによるバラ付きがあり、必要個数を一つの店でまとめて買った方がいいようです(同一ロット品にあたる)。 私の少ない体験では、一緒に買った同一ランク品のhFEは結構揃っているという印象です。
<端子配列>
注意が必要なのは、ベース、エミッタ、コレクタの各端子配列がパッケージによって様々なことで、共通のパッケージ形式も一部あるようですが、各社独自のパッケージが主体で、「トランジスタ規格表」(巻末に外形図掲載)や各社のホームページのデータシートで確認するか、または、購入時に店で教えてもらって確認しておく必要があり、hFEメーターが付いたDMM(デジタル・マルチメータ=デジタルのテスター)などで取付け前にも点検するのが無難です。 「トランジスタ規格表」は大きな書店や一部の部品屋さんでも売られていますし(千5百円位)、トランジスタを扱っている部品屋さんで購入時に見せてもらうこともできます。 hFEメーターが付いたDMMは3千円台位からあるので1台あるとなにかと便利です。
<放熱と最大定格>
真空管アンプでトランジスタを使うとすれば、整流回路のリップルフィルターや定電流源などの電源関係が多いと思いますが、最大定格が何A、何Wとなっていてもボディが小さいトランジスタは発熱のため単体ではわずかな電流しか流せないもので、電力用は消費電力に応じて適切な放熱器に取り付ける必要があります(最大定格の消費電力は無限大放熱器が前提)。 また、パワー用トランジスタは本体の取り付け部分(フランジ)が金属剥き出しのものが多く、フランジ部分はコレクタに繋がっているため、このタイプのトランジスタを放熱器に取り付ける時には必ず絶縁シートを挟む必要があります。 取り付けは、トランジスタと放熱器の表面の微小な凹凸を埋めて熱の伝達をよくするため両方にシリコン・グリスを塗って絶縁シートを挟み、絶縁ワッシャーを入れてビス・ナットで密着させます(このタイプのトランジスタを買う時は、部品屋さんで一緒にそれらの小物も買っておきましょう)。
また、最大定格電圧についても、高耐圧トランジスタなどではベース・コレクタ間耐圧(VCBO)に比べコレクタ・エミッタ間耐圧(VCEO)がかなり低いものがあり、店で耐圧として表示されている値がVCBOだけのことがあるので注意が必要です。 トランジスタは一瞬でも耐圧を超えると昇天し回路に大きなダメッジを与える恐れがあるので定格の50〜60%位で計画するのが安全なようです(今から見ると、最初のころのアンプは結構ぎりぎりの設定だったりします)。 放熱器の熱計算や、トランジスタを安全に動作させれる範囲(Area of Safe Operation、ASOと略、SOAとも言う)については、トランジスタ技術Special No.1の「特集 個別半導体素子 活用法のすべて」などを参照ください。
あと、注意点としては、ヒーターが暖まってから電流が流れだす真空管とは電源ON/OFF時にタイムラグが生じるため、半導体部分に電源電圧がモロにかかったり、回路によっては逆バイアス状態になる恐れがあり、そういう事態に対する検討と対策も必要です。
ちなみに、一般的なトランジスタの値段は、小電流の小型のものだと数十円程度、パワー用のもので2〜3百円から5百円程度で真空管に比べると安いものです。 定番のものなど10ヶ、20ヶのパックで売られているものなら一個当たりの値段は更に割安です。
FETは、三極管のグリッド、カソード、プレートの各端子に相当するゲート(G)、ソース(S)、ドレン(D)の3本足です。 回路的にはバイポーラ・トランジスタと同じ使い方ができますが、違うところは、ゲート・ソース間に電流がほとんど流れず、真空管と似てゲート・ソース間にかける電圧(VGS)によってドレン・ソース間の電流を制御するところです。
<極性と種類>
極性の違うNチャンネルとPチャンネルがあって、型番は真空管と同じ極性のNチャンネルが2SKで、Pチャンネルが2SJです。 また、JFETはゲートがソースより低い電位になるバイアスで使用し、ゲート・ソース間が0Vで最大の電流(ドレン飽和電流=IDSSと略)が流れます。 それに対して、MOS FETは、JFETと似てゲートがソースより低い電位で電流が流れるデプレッション型(JFETと異なり0Vを超えた正の領域でもドレン電流が増える)と、ゲート・ソース間が0Vより正の領域でドレン電流が流れるエンハンスメント型があります(いずれもPチャンネル型ではゲート・ソース間の極性は逆になります)。 動作時のベース・エミッタ間電圧が概ね0.6Vで一定しているバイポーラ・トランジスタと異なり、FETの場合はいずれもモデルによって特性が違うので、端子配列等と一緒に事前に調べておく必要があります。
バイポーラ・トランジスタの増幅率はhFEで示されますが、FETはゲート・ソース間電圧VGSでドレン電流IDを制御するため、VGSとIDの変化の比=相互コンダクタンス(gmと略、順方向伝達アドミッタンスYfsとも言う)が増幅の指標になります。 また、トランジスタが温度が上昇するに従い電流が多く流れる傾向を持つのに対して、FETは電流が多く流れる領域では温度上昇に対して電流が減少する傾向を持ち、素子と動作点によっては変動の少ないポイントを選べたりしますので、この点でもトランジスタとは異なるところがあります。
<JFETとランク>
バイアス回路無しで真空管に似た使い方ができ、且つ、真空管に比べて低い電位で動作するJFETで初段を構成し次段の真空管と直結する等が、真空管アンプでのFETの使い方の代表例ですが、JFETのランク分けはgmではなくIDSS(ドレン飽和電流)によります。 JFETのIDSSのロット間のバラ付きは同じランクでもかなり大きい感じで、回路を決めて希望のIDSSのものを捜すより、どちらかと言うと、先に素子を少し多めに買って、その中から選ぶか、買う時点でIDSSがわかるペア選別品(ペア選別品を扱っている店は限られますが)を買って、それで回路を設定する方が手間がかからず安上がりです。
私の少ない経験では、JFETでも一緒に買ったもののIDSSはある程度近い値になりますが、外れるものもわりと混ざっています。 ある程度近いものから1ペアは比較的簡単に作れますが、揃った2ペアを作るのは難しいという印象です。ペア特性の精度が必要な場合は、初めから一つのパッケージに二つの素子が入ったデュアルFET(入手できるデュアルタイプの種類はごく限られる)で計画する方が賢いように思いますが、いずれにしても、左右用に揃った2組みを見つけるのは結構大変です。
なお、JFETは五極管に似た特性カーブを持ち、ドレン・ソース間の電圧VDSが動いても流れる電流がほとんど変わらない定電流特性の優れた定電流源用のモデルがあり、簡単に定電流源をつくれます(例えば、ゲート端子をソース端子にショートに繋ぐだけでドレン・ソース間にIDSSの一定電流量が流れる定電流源になる)。
#この特性を利用して2端子の製品としたものが定電流ダイオード(CRDと略)です。
なお、定番的なJFETの値段は小信号用トランジスタとそんなに変わらないようですが、MOS FETはトランジスタより高めのようです。