アサガオの仲間たち
アサガオはヒルガオ科の植物で、奈良時代に中国から種子を薬とするために
持ち込まれ、その後、園芸植物として発展しました。同じヒルガオ科の仲間には
ヒルガオやヨルガオ(通称のユウガオのほうが有名ですね)、サツマイモなどが
あります。ヒルガオ科は熱帯原産の植物が多く、夏の炎天下でも盛んに成長しま
すので、今後さらに園芸植物として利用されるものと期待しています。
ハリアサガオ
[Ipomoea muricata (=Calonyction muricatum)]
植物学上の正式名称であるハリアサガオよりも、通称である赤花夕顔(あか
ばなゆうがお)の名称で種子や苗が売られています。ヨルガオの近縁種で、夕方
になると直径5cmほどの淡い赤紫色の花を咲かせます。茎や葉柄に
無数のトゲ
があるため、このような和名がつけられたのでしょうが、見た目と違ってト
ゲは全然痛くありません。
銀葉コンボルブルス
[Convolvulus cneorum]
この名称は、正式な和名が分からないため園芸店で使われていた商品名を使
いましたが、学名のコンボルブルス・クネオラムとしても売られています。ヨー
ロッパ原産の灌木状になる多年草で、3cmほどの淡いピンクの花を咲かせるだけ
でなく、葉も微毛が密生した美しいシルバーリーフです。残念ながら、夏の暑さ
で枯らしてしまいましたが、ヒルガオ科としては今後期待のニューフェースです
。
サツマイモ
[Ipomoea batatas]
あまり知られていませんが、野菜のサツマイモも立派なヒルガオ科の植物で
す。普通のサツマイモは日本国内で花を咲かせることはほとんどありませんが、
花を鑑賞するもの
も市販されており中輪でピンクの花を多数咲かせます。この他にも、最近で
は園芸品種として、斑入りや黄葉のもの(これは
テラスライム
の品種名で売られています)、葉が細かく切れたモミジ葉の品種なども流通
するようになりました。
ソライロアサガオ
[Ipomoea tricolor]
むしろ、ヘブンリーブルー(Heavenly Blue)という品種名でよく知られてい
る、アサガオの近縁種です。強健で花数が多く、昼までしおれず咲き続けますが
、品種のバラエティがあまり多くないのが欠点でしょうか。それでも、青色以外
に白やピンク、絞り咲きなどの品種があります。同じイポメア属でもアサガオと
は異なるグループに属するため、アサガオと交配してもまったく結実しません。
マルバアサガオ
[Ipomoea purpurea (=Pharbitis purpurea)]
アサガオの近縁種で、丸い葉からこの名前で呼ばれています。江戸時代には
すでに渡来しており、栽培品以外にも野生化している姿をよく見かけます。アサ
ガオによく似ていますが、結実すると刮ハが下向きになることや、葉を見ると葉
脈が窪んでいることとなどから、比較的容易に区別が付きます。非常に花数は多
いのですが、10時頃にはしぼんでしまうのが欠点です。寒さにはアサガオより強
いため、ヨーロッパなどで広く栽培されており、色々な品種があるようです。近
年広く見かけるようになった曜白朝顔は、アサガオの研究者として有名な米田先
生がアサガオとこのマルバアサガオの種間交雑から見つけだしたものです。
ケープタウンアサガオ
(ノアサガオ) [Ipomoea indica (=Pharbitis congesta)]
これは、アサガオと同属のノアサガオが園芸化されたものです。ノアサガオ
自身は、沖縄などで本州におけるクズと同様に、たちの悪い雑草とされているよ
うです。しかし、この品種は日本産の系統とは異なり、
一つの枝に非常に多数の花
を付け、非常に美しいものです。このように多花性であることと、花筒が赤
くなることから、中国産の系統に属するノアサガオではないかと推測されていま
す。一般のアサガオとは全く別種であり、非耐寒性の宿根草で普通は結実しませ
んし、朝顔と交配しても種子はできません。また、
イリオモテ朝顔
として販売されているのも、このケープタウンアサガオと全く同じ系統のノ
アサガオのようです。
アメリカアサガオ
[Ipomoea hederacea (=Pharbitis hederacea)]
アサガオと同じグループに属し、アメリカ原産のためアメリカアサガオと呼
ばれています。花は直径3cm程度の小輪で、花色は赤や白もあるらしいのですが
、よく見かけるのは青色です。戦後輸入穀物に混じって帰化し、現在では雑草と
してあちこちでよく見かけます。葉の中央の裂片のくびれが特徴で、この遺伝子
はアサガオにも種間交雑によって導入されています。変種として、葉が丸く特徴
的なくびれのないものもあり、こちらは
マルバアメリカアサガオ
と呼ばれています。
マメアサガオ
[Ipomoea lacunosa]
別名ヒメアサガオとも呼ばれ、丸葉で1〜2cmの小さな白花を咲かせます。ア
メリカアサガオと同様に戦後の帰化植物で、今では雑草としてヒルガオなどとと
もにフェンスに絡みつく姿をよく見かけます。
ホシアサガオ
[Ipomoea triloba]
マメアサガオと非常によく似ており、同様に1〜2cmの小さな花を数多く咲か
せます。ピンク色の花で中心部が紅紫色となるのが最大の特徴です。こちらも、
北アメリカ原産とされる帰化植物で、あちこちで雑草として見かけます。
ヨルガオ
[Ipomoea alba (=Calonyction aculeatum)]
ヨルガオは夕方から大きな白い花を咲かせるため、園芸店では夕顔(ゆうが
お)と呼ばれることが多いのですが、本当のユウガオはカンピョウの原料となる
ウリ科の植物です。昔から園芸植物として栽培されているのですが、原種のまま
でも花が10〜15cmと大きいためか、特に品種改良は行われていないようです。
ルコウソウ
[Ipomoea quamoclit (=Quamoclit pennata)]
まるで羽毛を思わせる繊細な葉を持つのが、このルコウソウです。同じグル
ープには、丸葉で輸入飼料からの悪質な雑草として最近有名になった
マルバルコウソウ
[I. coccinea] や、両者の雑種で鳥が羽根を広げたような美しい形の葉をした
ハゴロモルコウソウ
[I. ×multifida] があります。いずれも、1cm程度の小さな緋色の花を咲かせますが、園芸化
されているルコウソウには白花もあるようです。
ミナ・ロバータ
[Ipomoea lobata (=Quamoclit lobata)]
ルコウソウと同じグループに属する花ですが、花の咲き方などはかなり変わ
っています。つぼみは穂状になり最初は鮮やかな赤色ですが、徐々に黄色そして
白色になり開花します。園芸店では「英国風あさがお」などと称して売られてい
ますが、他のアサガオ類と比較して開花は遅く、10月以降に咲く秋咲きのよう
です。
ヒルガオ
[Calystegia japonica]
こちらも園芸植物ではなく、日本に昔からある雑草です。朝顔に対して昼顔
と呼ばれるように、昼にピンクの小振りな花を咲かせる蔓植物です。ほとんど園
芸化されていなかったのですが、最近になって、牡丹咲きの品種も販売されてい
るそうです。
コヒルガオ
[Calystegia hederacea]
ヒルガオより一回り小さな花を咲かせるのが、このコヒルガオです。ヒルガ
オの葉は鉾形で全体に長く丸みがあるのに比べ、コヒルガオの葉は基部が横に張
り出し尖っているのが特徴です。また、花もヒルガオよりも、やや白っぽいこと
が多いです。
アサガオガラクサ
[Evolvuls alsinoides]
エボルブルスという属名もありますが、品種名のアメリカンブルーとして有
名です。これもアサガオの仲間で、非耐寒性の宿根草で1〜2cmの小さな青い花を
毎日咲かせます。丈夫なこともあり、寄せ植えの材料としてよく使われるように
なりました。多花性でよく咲くのですが、ほとんど種子をつけません。
アオイゴケ
(ダイコンドラ) [Dichondra micrantha]
このアオイゴケも日本に自生しているヒルガオ科の植物で、ちょっとヒルガ
オの仲間には見えませんが、群生して地面を覆うように拡がってゆく姿は、なか
なか美しいものです。最近では、グランドカバー用としてダイコンドラの名で近
縁種が花屋で売られるようになりました。
ネナシカズラ
[Cuscuta japonica ??]
最近ではネナシカズラ科としてヒルガオ科に含めないこともあるようですが
、寄生植物であるネナシカズラも昔はヒルガオ科に分類されていました。これは
鳥取砂丘で見つけましたが、オレンジ色のラーメンのようなものがネナシカズラ
で、緑色の
寄主にからみつき
栄養を奪っています。この写真は何種類かある近縁種の可能性もあるのです
が、残念ながら花が咲いていなかったため正確な種名は決定できませんでした。